シンダイガイド|信州の学生と地域をつなぐWebメディア

【信濃毎日新聞×学生】“就活情報の新しい形”を考える【企業インタビューby松本若者会議】

  • 2023.04.24
  • 2023.04.24
  • インタビュー
  • 就職活動
  • インターン情報
  • 松本
  • 長野
  • 上田
  • 伊那

あなたは「伝わる」文章、書く自信がありますか?「わくわくする」企画、提案できる自信はありますか?

SNSやnoteでの発信、プレゼンテーション、イベントの企画、ワークショップ…今まで自分でなにか作ったことがある人は、その大変さを実感したことがあるかもしれません。

2022年度 松本若者会議で行われた”地元企業とつながるスキルアップ・プロジェクト“で、「地域企業さんの課題解決の提案を通して自分自身のスキルもアップもしちゃおう!」という講座が開催されました。

私は、学生メンバーとしてこの企画に参加した信大教育学部1年の“せきパパ”と申します。この記事では、スキルアップ・プロジェクトの中で学んだことや体験したことを交えつつ、私が考えた松本の地域企業の課題を解決するためのアイディアをご紹介します。

今年度の”地元企業とつながるスキルアップ・プロジェクト”では、特に文章力と企画力に注目。ライティングの能力や企画の立て方などを講義形式で学びつつ、連携する地元企業を調査したり、インタビューをしたりして、松本が抱える社会課題の解決に寄与するようなインターンシップを企画の提案を行いました!

インタビューに伺った企業は「井上百貨店」さんと「信濃毎日新聞」さんの2つ。この記事では、信濃毎日新聞さんへのインタビューと、そこでの気づきと課題に対する私の提案を以下の記事にまとめたので、ぜひご覧ください。

井上百貨店さんのインタビューはこちら↓

信濃毎日新聞を深堀りする

【インプット】

今回は、信濃毎日新聞松本本社に伺い、広告部の岡村次長にインタビューをさせていただきました。

インタビューは北アルプスの眺めが抜群の信毎メディアガーデンにおじゃましました

長野県ではもっともメジャーな新聞

皆さんは信濃毎日新聞を読んだり、デジタル版のニュースを見たりしたことはありますか?

長野県で生まれ育った方々にとってはとてもなじみ深い新聞だと思いますが、大学進学のため信州にやってきた方々も一度は耳にしたことがあると思います。

信濃毎日新聞は明治6年(1873年)創刊の歴史ある新聞で、販売部数は41.2万部、県内世帯普及率は現在でもなんと約50%ととても高いです。信州から東京に移住した人が、東京のコンビニエンスストアに信濃毎日新聞がなく、そこで初めて信毎が全国紙でないと知ったというエピソードがあるほどです。

報道部以外のお仕事

「当たり前ですが、新聞社は報道部や取材部だけではありません。それ以外にもたくさんの仕事があるのですが、あまり知られてないかもしれません」と岡村次長。

新聞自体の魅力を向上させるべく、動画を使って情報発信をする「しんまいCM動画コンクール」の開催や、松本マラソンや安曇野ハーフマラソンの実施サポートなどなど、日々の発刊のみならず、地域と一緒にたくさんのイベントや取り組みを行っています。

広告部のお仕事

取材させていただいた岡村さんが所属している広告部について教えていただきました。

まず初めに2枚の新聞広告を出してくださいました。

1枚目は左右2面を大胆に使って諏訪湖の夜景が印刷されたもの。2年前、新型コロナウイルス感染拡大防止のため中止となった諏訪湖花火大会を紙面で楽しんでもらおうと作成されたものです。一見ただの夜景が描かれた紙面ですが、右下のQRコードを読み込んだうえでスマートフォンをその紙面にかざしてみると、なんと画面には夜景の上に花火が打ち上がっているではありませんか。この紙面は長野県内外で大きな話題となったようです。

2枚目は全面が赤いカーネーションで彩られているものです(下記の写真参照)。これは母の日に合わせて作成された広告で、カーネーションの生花を使って様々な場面や感謝が描かれました。

こんなに大きな広告も!

地域企業と圧倒的なつながりが強み「長野県就活ナビ」

こうした広告運営も行いつつ、長年に渡って学生向けに行っている事業があります。

それが就活生向けサービスの長野県就活ナビです。長野県就活ナビは、就職活動中の学生に向けて、県内企業の情報を提供するプラットフォームです。運営は信濃毎日新聞社が行っており、企業紹介や採用情報はもちろんのこと、県内での過ごし方や働き方などを考えられるような情報も多数掲載しています。

また情報掲載のみならず、実際に紹介されている企業を自分の目で認識できるように、キャリアデザインを目的とした「シゴトセミナー」や合同企業説明会などを開催し、県内の就活生をサポートしています。

働くことを身近に感じることができる、先輩のインタビューも!

信濃毎日新聞の紙面や、Twitter、LINE、YouTubeなどでも発信しているので、ぜひのぞいてみてください。

また、就活生が実際に手に取れるハンドブックも制作しています。掲載企業数は200企業以上で、年10回開催される合同企業説明会にも毎回50~100社ほどの企業が参加しています。掲載・参加業種は多岐にわたり、文系理系学生の専攻分野に関わらず様々な企業の情報を得ることができます。企業の情報に加えて、その企業で働く社員のコメントが掲載されており、読み手である学生は将来のキャリアを具体的に想像できるような工夫もなされています。

長野県全域で購読者を抱える信濃毎日新聞だからこそ、県内企業と学生をつなげていけると始まった就活ナビ。しかし最近になって、ある課題に直面しているようです。

企業とのつながりは強いが、学生への認知向上や参加率が課題

信濃毎日新聞が抱える課題
「信濃毎日新聞が展開する<長野県の就活ナビ>で
地元企業の採用課題の解決にさらに貢献することはできないか?」

長野県下の情報発信を得意とする新聞社が運営する就活ナビの強みは、地元企業との強いつながりです。

一方で、学生の参加率に関して課題があるようで、2022年5月時点で長野県就活ナビの登録者数は1,621人(2023年キャンペーン時)、また、合同企業説明会などの各種イベントの参加者は1回あたり100~200人程度と、もっと学生の参加を促したいとのことです。恥ずかしながら信大生である私自身も、これまで就活ナビを認識していませんでした。

その原因は様々ありますが、1つにはそもそも県内での大学進学率が低いという点(※1)や、県内大学に所属する学生の目線がどうしても首都圏の企業に向いてしまうという点が挙げられると思います。特に約8割が県外出身者である信州大学では、地元に戻って就職するという学生も多く、就職先として県内企業を選ぶ学生が少ないという課題があります。(※2)

(※1)長野県の統計情報 統計ステーションながの[県民文化部高等教育振興課]
県内大学の収容力
https://tokei.pref.nagano.lg.jp/kpi/8903.html

(※2)長野県高等教育振興基本方針(平成28年5月策定)
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/042/siryo/__icsFiles/afieldfile/2017/09/29/1396445_01_1.pdf

また、学生への周知についてもこれまでとは状況が変わってきているようです。「学生への周知は学校を通じた広報のほか、新聞に就活ナビについて掲載し、それを見た親御さんがお子さんに伝えるというのが主なものでした。しかし今現在、新聞の購読者数は下降傾向が続き、新聞を通しての就活ナビの周知の効果が弱まっています」と岡村さんは言います。

では、どうしたら学生にもっと県内企業に興味関心を持ってもらえ、ひいては「長野県就活ナビ」の認知度アップが実現できるでしょうか?

長野県就活ナビをどう広めるか?岡村さんと考える

学生⇔ 信濃毎日新聞(長野県就活ナビ)⇔県内企業
の双方向のつながりを構築しよう!

参加インセンティブで学生を巻き込む

【アイデア提案】

岡村さんから就活ナビの現状を伺い、企業の情報発信が一方通行だったことに課題を感じた私は「説明会参加レポート制作キャンペーン」として、ただ合同説明会に参加するだけでない“しかけ”を作ってみるのはどうでしょう?と、提案しました。

具体的には説明会で話を聞いた企業について、資料などを見直して企業情報をまとめたり、企業の方との対話の中で感じた自分の想いや感想をレポートとして就活ナビに掲載するというアイディアです。

参加する学生のメリット

  • 就活や今後のスキルアップに必要なライティング力が身に付く
    レポートに対する信毎の記者さんからのプロ目線でのフィードバック付き(だと嬉しい!)
  • 自分のキャリアを具体的かつ深く考えるきっかけになる
  • レポート記事を就活での自己アピールにも使える
  • 執筆料がもらえるかも(もらえたら嬉しい!)

信濃毎日新聞<長野県就活ナビ>のメリット

  • 学生がどんな企業に興味を持っているのかを知るための指標になる
  • 学生・就活生から寄せられる生の情報を就活ナビのサイトやハンドブックに掲載することで、他の就活生も合同企業説明会や県内企業をより身近に感じられるようになり、認知度や参加率の向上につながる

参加企業のメリット

  • 学生の書いたレポートを見て「ここは上手く伝えられた」とか「逆にここは上手く伝わっていなかった」というように、採用活動の制度を高めていくことができる
  • 学生が求めていることや企業選定の基準を把握できるため、次回以降のPR方法の改善にも活かせる

また、信濃毎日新聞の購読プランに「学割プラン」もあると良いのでは、と提案させていただきました。購読情報と就活情報が一体的に得られたら、学生メリットも大きいのではと感じました。

普段、授業のレポート作成や調べものの際に新聞の記事やデジタルアーカイブを引用できれば、より新聞を活用してもらいやすくなります。その上で、紙面やアプリで就活情報や学生向けの情報を載せることでより若い世代にも読んでもらえる新聞に近づくと感じます。また、県内学生の取り組みは、よく信濃毎日新聞さんで取材してもらうので、自分の書いた記事や活動が掲載されると嬉しく、親近感や地域企業の愛着がさらに増すと思います!

{新聞社⇔企業}から{学生⇔新聞社⇔企業}の構図へ

こうした学生による企業レポートの取り組みを始めることで以下のように、就活ナビの構造が変わっていきます。

これまで

{企業 ⇔ 新聞社(就活ナビ)} → 学生

であったものが、

企業 ⇔ 新聞社(就活ナビ) ⇔ 学生

というように、今まで企業から集めた情報を整理し、それを学生に提示するという一方通行の構図から、学生が取材した企業の姿が就活ナビや信濃毎日新聞を通して企業にも学生にも届けられる双方向の構図に変わり、新たな価値が誕生するのではないでしょうか。

[補足アイディア] 1・2年生に向けた情報発信も

もう1つのアイディアは、就活生だけでなく1・2年生から活用してもらうというものです。私は、大学1・2年生はそもそも県内就職に興味関心を持ちやすいと考えています。

大きな理由は、大学で行われる一般教養系の授業にあります。例えば、県内の大学ではキャリア形成や地域活性について学ぶ講義があり、県内企業の取り組みの紹介を受けたり、企業から課題を出されたりする講義もあります。また、1・2年生向けのキャリアイベントに参加する学生も増えてきています。

そうした低学年次の学生たちに、一回のイベントだけでなく、継続したアプローチができれば「長野県就活ナビ」の認知度向上、インターンシップや就職説明会の機会にも円滑につなげられると考えました。

現在、長野県就活ナビのメインターゲットとは異なりますが、長い目で見ればきっと課題解決に役立つと思い、1つ目のアイディアと合わせて岡村さん提案させていただきました。

信濃毎日新聞さんからのフィードバック

「これはやってみたいですねぇ」と好反応をいただきました!

その上で、岡村さんからはこんなコメントも。「認知度のある企業に加え、学生の皆さんはなかなか知らない優良な企業にも有効かもしれませんね。レポートにまとめてもらうことで、学生が企業のことを理解した上で就職につながれば、ミスマッチも防ぐことができそうです。私が学生の頃に比べたら、今の学生が触れる情報の量は段違いに多いと思います。一方で、学生が自分と同じ目線で企業の情報をまとめ、キュレーションして発信することで、情報の価値づくりもできる。その方が共感も得られやすいかもしれませんね。」

さらに、「就活ナビは本来、企業と学生の架け橋になって、双方にとって役立つプラットフォームになるべきだと思います。しかし就活ナビもビジネスとして行う以上、どうしても企業の方を向きがちになってしまう傾向がありました。ビジネスを持続させながら、今後学生側との繋がりをどう増やしていくかを同時に考えていきたいです」と、今後の課題についても教えていただきました。

また、合同企業説明会は就活生向けのイベントではありますが、1・2年生にも大変勉強になる機会であると岡村さんは語っておられました。こうしたことに取り組まれている県内大学の先生や高校・大学生の皆さんともつながり、協働していきたいとおっしゃっていました。

結びに:ナビサイトを新しい相互交流のかたちへ

今回就活ナビというサービスを知って、その有用性に驚かされました。実はインタビュー前に改善策を考えていくはずだったのですが、考えていく中でそもそも就活とはどういうものであるべきか、県内企業を魅力的に伝えていくためには…と考えが発展してしまい、なかなか考えがまとまりませんでした。

しかし岡村さんから様々な話を聞き、対話をしながらアイディアを提案することができました。2023年度、私自身も学生と企業をつなげるイベントの運営委員になる予定なので、それを前に企業視点の大きなヒントもいただきました。引き続きこうした課題に向き合い続けます。

後日談

1つ目の提案である「合同企業説明会に参加してレポートを書く」というアイディアですが、信濃毎日新聞とシンダイガイドの協力のもと早速実行してみました。2023年3月6日に実施された合同企業説明会に参加し、その振り返りと感想をまとめた記事を執筆しました!

これから就職に向けて動き出していくと言う方々にもぜひ読んでいただき、長野県合同企業説明会について知っていただけたら嬉しいです!

企業情報

社名信濃毎日新聞株式会社
本社所在地長野市南県町657
会社設立1873(明治6)年7月5日
資本金2億円
社員数432人(2022年4月現在)
編集系223人/営業系93人/印刷・制作系86人/総務系・その他30人
Webサイトhttps://www.shinmai.co.jp/

この記事を書いた人

せきパパ

せきパパ

教育学部所属だけど地域活性化の勉強が楽しすぎて自分の学部をたまに忘れるきまぐれ老け顔ライター。シンダイガイドのメンバーではありませんが、信州の魅力や信州をより元気にしていけるような話題を時よりお送りしていきたいと思います~! 良かったら信州民に知ってほしい県外の地方の魅力も伝えていきたいなぁ~

関連記事

すべて見る