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【気になるあの人のはたらき方#1】株式会社ふろしきや・田村英彦さん

  • 2023.06.08
  • 2023.06.12
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こんにちは!外部ライターの上野るかです。

皆さんは、大学卒業後や将来に対して不安を感じることはありますか?

漠然と「数年後の自分は何をしているんだろう」と不安がよぎったり、焦燥感に駆られたり。あるいは「就活にどう向き合えばいいんだろう」と感じる方も、多くいるのではないかと思います。

そんな人たちに向けて、2023年2月にキャリアイベント「いきはたパーク~誰かと自分の生き方・はたらき方に出会う場所~」を開催しました。

▼「いきはたパーク」の概要はこちらをチェック!

今回「いきはたパーク」では、実施にあたりクラウドファンディングを実施しました。その際に賛同・ご支援してくださった「株式会社ふろしきや」の田村英彦(たむら・ひでひこ)さんへ、賛同の経緯や想い、現在行っている事業、そしてどのような「自分らしい」はたらき方をしているのか、「いきはたパーク」発起人である上野がインタビューしに行ってきました!

「ふろしきや」ってなんだ?

一風変わった社名を持つ「株式会社ふろしきや(以下「ふろしきや」)」。

少し調べてみると、何やら風呂敷を売っている訳ではなく、ふろしきのように人や物事をまとめ、社会をよくする取組を作り出す会社だということが分かりました。

ふろしきやの拠点である千曲市は長野県の北信地域に位置し、市の中心を流れる千曲川と、レトロな街並みが残る戸倉上山田温泉が魅力的。今回は、目の前に千曲川が流れる公園にて、春の暖かさを感じながら取材を行いました。

改めて「ふろしきや」とはどのような会社なのでしょうか?

「新しいまちのつかい方」の提案と実装や、ソーシャルグッドな取組や社会課題解決につながる場づくりを行っている会社です。

まちづくりやソーシャルビジネスの領域において、 ワーケーションやMaaSなど 「コレクティブ・インパクト(社会を変える集団的インパクト)」が生まれる事業に取り組んでいます。

2016年の設立以来、ワーケーションやアイデアソン等さまざまな事業を展開してきたという「ふろしきや」。詳しい事業内容を伺う前に、そもそもなぜ「ふろしきや」をつくったのかを聞いてみました。

「ふろしきや」立ち上げに至るまで

自分の得意なことと向き合い、生まれた「ふろしきや」

「ふろしきや」を作ったのは、自分の得意なことである「まとめ役」を活かせると思ったからなんです。自分がやっていて一番楽しいことだったり、苦しまずに前向きにできる仕事って何だろうと考えたときに、「まとめ役」だなって。

まとめるのって、とても大変そうなイメージです…!

そうそう、「まとめ役」はみんな嫌がるんですよね(笑)みんな好き勝手言うし、揉めるしね。でも気持ちが揃って、何か一つのことをやり遂げたときって、すごく嬉しいし、楽しい。いい意味で考えもしなかったことが起こるし、そういう瞬間が自分のモチベーションなんです。だからそれを仕事にしたかったんですよね。

就活の際にも「まとめ役」のプロとしてやっていくことを考えていたという田村さんは、「まとめ役」のスキルを学べる会社に就職したといいます。

そのころは東京で、プロジェクトマネジャーという職種が一部の業界で「まとめ役」として認知されていたんです。そういうところで自分が培ってきた「まとめ役」としてのスキルを磨いて、社会にどう役立つか試そうと思って、社会人をスタートさせました。

その会社では、企業の働き方やオフィスの空間デザインなど、成果をあげる組織づくりに繋げるための戦略・空間・行動設計のディレクションを行っていました。その中で、数千人規模の企業相手にプロジェクト実績を積んで「まとめ役」としての自信も付いてきた頃だったので、今度はより多くの立場が交わる実生活の場である「地域・まちづくり」の分野に飛び込むため「ふろしきや」を立ち上げたんです。

ポップで可愛らしいホームページのトップには、「ひろげる つながる そして 拓ける」と書かれており、まちをふろしきに見立てていることが想像できる。

▼ふろしきや公式HP
https://furoshiki-ya.co.jp/

原動力は、「人の役に立ちたい」

一方で、元々は大学で遺伝子工学や再生医療の研究をしていたという田村さん。「ふろしきや」という分野の全く異なる会社を設立した裏には、どのような経緯があったのでしょうか。

学生の時は、このまま研究畑に行きたいなと思っていて。ベタな話だけど、ジュラシックパークのような世界観が現実にある。遺伝子工学とか科学って、人の認識を変えたり、世の中をさらに良くしたり、すごい可能性を秘めているんです。それに魅了されて大学を選び、大学院まで通いました。

田村さんが何度も口にしていたのは、「世の中を良くする」ことや「人の役に立つ」こと。「ふろしきや」も、大学での研究も、田村さんご自身の目的は一貫しているように感じます。

人の役に立ちたかったので、IPS細胞の研究をしたりしていました。基礎研究を通じて世の中が良くなっていけばいいなと。だけど研究を続けても、十数年で論文一本分の発見で変わる世の中が小さ過ぎるなと切なく思って。

一方で、文化祭実行委員会長とか、フィールドホッケーのコーチ・監督の経験を通じて、何かを創り上げたり、成し遂げる瞬間がすごく好きだと感じていたんです。そこにモチベーションがあったし、直接的に人と関わる分野で貢献していく方がいいんじゃないかと感じ、ばっさりとキャリアを変えました。周りの人にはかなり反対されたけど、自分なりに思い切ってキャリアを作っていきましたね。

今までのキャリアをガラリと変えるという、大きな決断をした田村さん。踏み出すのに勇気がいるように感じますが、何かきっかけはあったのでしょうか。

新しい価値観と出会い、一歩踏み出す機会を自らつくる

大学で選手としてフィールドホッケーをやっていたときに、当時のコーチからかなり影響を受けました。彼はいろんな会社を渡り歩きながらキャリアを築いていた人で、いろんなことに好奇心が強く、とにかく面白い人で。今はさらに磨きがかかって、ジムに行くのは時間が無いから、神戸から大阪まで走って打合せに来たりする人です(笑)

自分は研究のことばかり考えていたから、世の中に色んな仕事があるというのを、その人を通じて知ったんです。そうやって新しい価値観を見せてくれる人に、いかに早く出会えるかが大事な気がしますね。ちなみに、彼は今「ふろしきや」のアドバイザーになってくれています。

長野県で言えば、上田市から長野市まで走ってくるような感じですね…(笑)
でもそのくらい衝撃的な生き方って、どこか憧れてしまったりする気もします。

ご自身とは全く異なる生き方に出会った田村さんは、自らの生き方やキャリアも大きく変えていきました。しかし一歩一歩の歩みは、自らの意思を軸に置きながら、自らの足で切り拓いているような印象を受けます。

これまで仕事をしてきた中で、今でも大切にしている言葉があるんです。それが、「まずは機会をつくり、その機会によって自らを変えよ」。目指すことや成し遂げたいことがあるときに、まずはひとつ自分で機会を作り、それを通じて自分を成長させて、さらに機会をつくっていく。そうやって自分のやりたいことや、在りたい姿に繋げていくということです。実力を付けてから行動するといった順番で考える人もいるけど、まずは機会づくりが大事だなと思いますね。

まずはとにかく泥臭く行動しようということですね。

そんな感じかな。それって結構怖いし、確かにリスクもある。でもリスクにならない可能性だってある。それにもし失敗したら、そのとき辞めればいいくらいの気持ちの方が良いのかなと思いますね。その代わり失敗を学びにするためにも、計画はしっかりと立てることが大事だと思います。

「ふろしきや」ができるまで、様々な出会いや大きな選択があったという田村さん。では実際に「まとめ役」として、どのような取り組みをしているのでしょうか。

何をしている会社なの?

普通は大学での研究などから身に付ける専門分野があると思うのですが、「ふろしきや」は「まとめ役」という自分の得意なことからアプローチしているので、かなり幅広く事業を展開しています。まちづくりの計画やイベントの企画、観光事業など、「まとめ役」が必要なところに突っこんでいったりしているんです(笑)

どんなところにおいても必要とされる「まとめ役」。「ふろしきや」は、そんな地域の期待を受けていることが想像できます。

具体的に言えば、一つは「温泉MaaSプロジェクト」という多様な移動手段をわかりやすく連携させて回遊促進に繋げるモビリティサービス分野での事業です。鉄道・バス・タクシーなど公共交通とも連携する社会実験的な側面もあります。その知見も生かしながらコロナ以降利用客が減ってしまった「しなの鉄道」について、行政側と一緒になってその沿線をどう活性化していくかを考える勉強会をアドバイザーとして一緒に企画をしたりしています。

もう一つは、地域の人の多様性を広げていく事業です。地域においては、外の人との交流をもう少し積極的に持った方が、プラスになることがあると思うんです。観光事業と絡めながら、より多くの人に来てもらうということをメインに取り組んでいますね。

観光事業というのは、具体的にどのようなことを行っているのですか?

このコロナ禍で知名度も上がった、ワーケーションというコンテンツを多くの団体と協働しながら提供しています。ワーケーションは平日の観光資源の有効活用が進み、人も混雑していないのでゆったりとした人の交流が進みます。これが土日だと観光色が強くなるし、たくさん来過ぎて交流が生まれにくくなるので。ワーケーションでは本当に色んなスキルを持つ人が来るので、参加者同士の深い交流を促すことで、地域にもインパクトが生まれる。ワーケーションを通じて、多様性とか人の出会いが増えていくようなまち・社会に発展してきています。

「寺ワーク」というのもやっていましたよね!(笑)

そうそう。寺って、元々みんなの拠り所でしょ(笑)その時だけ寺オープン。住職さんも喜ぶんですよね。紆余曲折あって住職になりましたという方もいるので、話を聞くとかなり面白いんです。

観光事業というのは、具体的にどのようなことを行っているのですか?

他にも「トレインワーケーション」など、ユニークな事業を展開している「ふろしきや」。一体どのような方が参加するのでしょうか。

ターゲットは30~50代くらいの方ですね。今の仕事のままでいいのかという危機感や、キャリアへの不安から参加される方も多くいらっしゃいます。首都圏だけでなく、長野県内から来る人もいますね。ブートキャンプワーケーションというのもしてて、身体を追い込むんです。その方が体験の密度が濃いから(笑)

今回の取材は、中古園児バスをリノベーションした「ふろしきやバスオフィス」にて。
事業拠点を移動式にすることで、地域や人との対話を大事にしているそう。

「ふろしきや」を通じて、地域の明るい未来を創りたい

より良い社会を実現していくために、「ふろしきや」を通じて自らが得意なことをアウトプットし続けている田村さん。これから実現したい地域の将来像について伺いました。

やっぱり、皆が明るい未来を見れるようにしたいですね。自分が千曲市に住んでいるので、自分の子ども含めて地域の未来を良くしていきたいという想いがすごくあります。十年後、自分は子どもに何を見せてあげられるのかと考えたときに、生き生きと誇りを持って仕事をしていたい。辛いだけが仕事だとは思ってほしくないですしね。地域全体がそうなっていくのは大変ですが、だからこそやりがいはあります。

自分らしいキャリアを歩むということ

大学生向けキャリアイベント「いきはたパーク」に賛同して頂いたことで繋がり、実現した今回の取材。田村さんから大学生に向けて、メッセージや想いを伺いました。

大学生のみんなには、生き生きと自分らしくいられるキャリアを歩んでほしい。その上で、一人じゃできないことや、皆でやるともっと良いことは、どんな形でも一緒にできれば嬉しいなと思います。私自身、学生の皆さんから教わる部分もすごくあります。年の違う人たちと関わる機会はとても大切にしているし、お互いにとって良いなと。野球が大好きなんですが、最近WBCで、ダルビッシュ有選手もそんなことを言っていました。(笑)

タイムリーですね(笑)

仕事の中でも学生との関わりがあるのですが、地域や社会、まちづくりにすごく関心がある印象を受けます。ただ、そういう分野はキャリアパスがそんなに多くないので、私自身のキャリアを取り上げてもらうことで、こんなキャリアパスもあるんだと感じてもらえればと思って、いきはたパークを支援させてもらいました。大学生が自主的に、皆を巻き込む形でやっているのもいいなあと思って、貢献したかったというのもあります。

私の周りにも、地域活動やまちづくりに興味がある学生は多いですね。ただ、キャリアとしての選択肢がそんなに多くないので、いざ就活を目前にしたときに悩む学生が多い気がします。

学生からそういう相談を受けることもかなりありますね。「地域のために」と思って地方銀行や自治体に入っても、現実とのギャップに葛藤しているという話は聞いたりしますよ。

自分自身の夢中になったりハマることを大切にしながら、新しい職種を作ることも可能性として考えてもいいかなと思っています。世の中に様々なチャンスやきっかけが散りばめられているのでそういうのがきちんと仕事に繋がっていくといいですよね。

最後に

「まとめ役」としてより良い地域、社会を目指す「ふろしきや」は、地域の若者や大学生の未来に対しても寄り添っていることが伝わります。田村さんご自身も、様々な出会いや選択・行動から、生き生きとした自分らしいキャリアを、地域の中で自分なりにつくり上げてきました。

皆さんの中にも、地域で活動したい、貢献したいと考えている方がいるのではないでしょうか。田村さんがおっしゃる通り、きっかけが散らばっている世の中です。まずは機会をつくって、飛び込んでみることが大切なのかもしれません。

この記事を書いた人

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信大生が運営する信大生のための総合情報サイト。2020年4月設立。 「信大生の大学生活をもっと楽しく充実したものにする」ことを目標に、信大生の役に立つ様々な情報発信中。

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