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【井上百貨店×学生】“百貨店の未来”を共に考える【企業インタビューby松本若者会議】

  • 2023.04.24
  • 2023.04.24
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あなたは「伝わる」文章、書く自信がありますか?「わくわくする」企画、提案できる自信はありますか?

SNSやnoteでの発信、プレゼンテーション、イベントの企画、ワークショップ…今まで自分でなにか作ったことがある人は、その大変さを実感したことがあるかもしれません。

2022年度 松本若者会議で行われた”地元企業とつながるスキルアップ・プロジェクト“で、「地域企業さんの課題解決の提案を通して自分自身のスキルもアップもしちゃおう!」という講座が開催されました。

私は、学生メンバーとしてこの企画に参加した信大教育学部1年の“せきパパ”と申します。この記事では、スキルアップ・プロジェクトの中で学んだことや体験したことを交えつつ、私が考えた松本の地域企業の課題を解決するためのアイデアをご紹介します。

今年度の”地元企業とつながるスキルアップ・プロジェクト”では、特に文章力と企画力に注目。ライティングの能力や企画の立て方などを講義形式で学びつつ、連携する地元企業を調査したり、インタビューをしたりして、松本が抱える社会課題の解決に寄与するようなインターンシップを企画の提案を行いました!

インタビューに伺った企業は「井上百貨店」さんと「信濃毎日新聞」さんの2つ。この記事では、井上百貨店さんへのインタビューの様子と、それに対する我々の提案についてまとめています。

信濃毎日新聞さんのインタビューはこちら↓

松本を代表する井上百貨店にはどんな課題が…?

松本駅前に構える井上百貨店

今回は、井上百貨店を運営する株式会社井上の井上博文副社長にインタビューをさせていただきました。

インタビュー早々「百貨店という業態に構造的問題があるんですよね」と井上副社長。それってどういうこと?!以下、インタビューの内容をまとめてみました。

井上百貨店2階の素敵なカフェでインタビュー

高度経済成長と百貨店

【インプット】

百貨店という業態が構築されたのは、1960年代頃。ちょうど高度経済成長期(歴史の授業などで聞いたことありますよね)と重なります。少し良いものを買いに行く場所、世界でも有名なブランドが買える場所として確立し、家族で休日に特別な買い物をする場所としてイメージを築いていった百貨店。

しかし近年、「モノ」から「コト」への消費意識の変化や、ECサイトの利用率の急激な上昇といった購買に対する人の意識の変化によって、百貨店も変革を求められるフェーズとなっているようです。

利用者層の固定化

現在の井上百貨店のメインの顧客層は比較的年代が上のシニア層です。「買い物はやっぱりINOUEが良い・安心できる」と今まで井上百貨店を支えてきていただいたこうした世代を、これからも大切にしたいと井上副社長。一方で、「20年後を見据えると、次世代に対しても新しい価値観にフィットした商品やサービスを提供していくことが、これからの井上百貨店の運命を決定づけていく」と語ります。

百貨店として何ができるか?井上副社長と考える

井上百貨店の課題
「井上百貨店のリソース、または百貨店自身の魅力を通し
松本周辺のローカルの魅力が伝わる新たなサービスやビジネスを生み出したい」

【課題設定】

百貨店はいろいろなテナント様に入っていただいき、そこでビジネスをしてもらうというモデルが主流です。これからは、それだけでなく「百貨店自身が商品・サービスを開発し販売を行えることが大事で、そのリソース(資源やつながり)がある」と、井上副社長は話しておられました。

「松本ならではの地域の素材や資源、それを井上百貨店が活用することで、地域の魅力を発信し貢献するとともに、新しい百貨店のあり方を模索してほしい」と、お題をいただきました。

井上百貨店の持つ強みは長年ビジネスの取引の中で生まれた”地元企業との繋がり“だと思います。加えて、これからは来訪者、観光客へのアプローチを強めていく。また、松本の魅力を発信する拠点として新たな価値を提供することを、特に大切にしていきたい部分です。」

こうしたなかで、「松本の伝統文化や工芸などの価値を幅広い世代に伝えていきたい」と意気込む井上副社長。しかし「若者世代にも目線を変えていきたいが、若い人だけで楽しむようなコンテンツでは本質的に課題にコミットしたとは言えないと感じている」とも語ります。

つまり、従来のメインターゲット層にとっても“新しいけど良い”と思ってもらえるようなものを創造し提供していかなければ、カコ・イマ・ミライと繋がっていかないのです。
なるほど、若者は若者だけに届くものでは、新しい価値を生み出すことは難しいのかぁ。
あれ?そういえば、この前「総合的な学習の時間」に関してのフォーラムに参加したときに聞いた事例と、なにか結びつけることができそうだな。

総合的な学習の課題から生まれるアイデア

【アイデア提案】

「総合的な学習の時間」は、小中学校を対象に2000年から始まった教科横断型の科目で、小中学校でその取組みが活発化しています。特に地元課題をテーマとした課題解決型の授業が展開されています。

例えば、長野県飯田市立上村小学校5・6年生では、飯田市上村の魅力を伝えることを課題として、シイタケの栽培を行っています。この栽培したシイタケを販売をすることで、購入者にも小学生にも地域産品を知ってもらう魅力発信をしています。

<参考>信州ESDコンソーシアム 令和3年度成果発表会&交流会

宮崎県綾町立綾中学校では「SDGs達成に向けて」をテーマに、冷房の効率使用に向けてグリーンカーテンとしてゴーヤを栽培したり、不要になった新聞紙を活かしてエコバックを制作したりして、環境に配慮した活動を課題に実践を行っています。

<参考>綾町立綾中学校 7月25日ゴーヤの販売!!

<参考>宮崎日日新聞 新聞エコバッグ役立てて 綾中生 直売所に500枚贈る

児童・生徒たちにとって、自分で課題解決のためにアクションをした経験が大きなモチベーションになり、何より実践力、企画力という点で大きな学びとなります。一方で、総合的な学習の時間ではビジネスや販路拡大はメインの目的ではありませんから、こうした活動を販売というかたちでより広げていこうとした場合、「作る」ことは経験できても、それを内外にPRしていく、販路を拡大することが難しかったと聞きました。

このことから、地域でビジネスをする体験の機会があると、学生がより多くの選択肢につながるのではないかと私は考えました。

総合的な学習の時間とは

変化の激しい社会に対応して、探究的な見方・考え方を働かせ、横断的・総合的な学習を行うことを通して、よりよく課題を解決し、自己の生き方を考えていくための資質・能力を育成することを目標にしていることから、これからの時代においてますます重要な役割を果たす科目とされる

平成29年度告示学習指導要領より

百貨店こそ、良さを活かす大チャンス

“児童・生徒”のアイデアを井上百貨店でビジネスに!

我々は井上副社長のインタビューをもとに、総合的な学習の時間で生み出された生徒児童たちのアイデアを発表したり、販売したりする場を百貨店に設けるのはどうかと提案しました。

考えられるメリット

  • 地域の信頼の厚い百貨店で行うことで、多くの人に注目してもらいやすくなる
  • 小学生や中学生などが実際の百貨店で販売経験を得ることで、井上百貨店に愛着を持つきっかけになり、百貨店へ通う顧客が次世代へ引き継がれ、若い世代が訪れてくれる可能性も秘めている
  • 保護者が自分の子どもが行っている販売会に訪れることをきっかけに井上百貨店に足を運び、現役世代にも顧客層をより広げることができる
  • 販売を井上百貨店で行うことで、先生たちが販売場所の手配をイチから行う労力を減らすことができる
提案中の様子(足は震えています)

井上副社長のフィードバック

提案をお伝えしたら「今すぐやりましょう(笑)」とおっしゃっていただきました!「こちらとしても場所はいくらでも提供できます。ここは我々の強みかもしれない。」

しかし、続けて懸念点もこう指摘していただきました。「学校は商業目的じゃないから、せっかく良いアイデアが生まれても、先生や生徒が変わって体制が変わると引き継ぎがうまくされなくなり、継続が難しくなったりします」。過去には、井上百貨店も参画した「そばの甘皮」から肥料を作る高校生のプロジェクトでは、事業の引継ぎの課題に直面したことがあったそうです。あくまでもそのアイデアは授業でできたもの。だからこそ学校で抱えてしまい、次年度以降後輩に引き継がれていくかは学校次第になってしまいます。そして引き継がれたとしても、継続したビジネスとして百貨店と協働できるかは確かではないという課題が残ります。

井上副社長はこの課題に対して、井上百貨店としてできることとして「私ね、こうした素晴らしいアイデアを学校だけで抱えるのではなくて、初年度は児童生徒にやってもらって、次年度以降は、もちろん同意のうえで地元企業に渡せばいいと思うんですよ」と、付け加えていただきました。つまり、ビジネスとして確立するためには、いろいろな主体が一緒になって発展する仕組みが必要であるということです。

熱意を持った開発者である児童生徒の熱量をそのままに、ビジネスは企業が受け継ぎ、さらに発展するように成長させる。そしてまたそれを百貨店などで販売することで、生徒・企業・地域の三方良しが実現するかもしれません。

結びに:若者のアイデアを地域や企業の課題の解決につなげる

今、変化を求められる百貨店ですが、井上副社長のように、新しい時代の流れに合わせつつ、自身の持つ良さを活かした新しい百貨店の在り方を模索する姿に圧倒されました。

一方で、私自身が教育学部ということで関心を持っている信州の教育は常に独自性を持っているがゆえに、様々なアイデアが創発されます。しかしそれを世間一般で見てみると、出ては消え出ては消えの繰り返しになってしまい、それを社会で活かすことに課題があると感じていました。

だからこそ、ここで地域企業の課題と学校で行われるプロジェクトの課題を解決する糸口として、若者や多様な人のアイデアを生かすことが必要であると考えています。今回の経験でよりそれを意識することができました。引き続き、いただいたフィードバックを活かし、より実践的なものに昇華させ、実践型インターンシップとして提案できるようなものにしていきたいです。

一緒にお写真を撮らせて頂きました

企業情報

社名株式会社 井上
本社所在地松本市深志2丁目3番地1号
会社設立昭和25年2月
資本金5,000万円
社員数200名
Webサイトhttps://www.inouedp.co.jp/

この記事を書いた人

せきパパ

せきパパ

教育学部所属だけど地域活性化の勉強が楽しすぎて自分の学部をたまに忘れるきまぐれ老け顔ライター。シンダイガイドのメンバーではありませんが、信州の魅力や信州をより元気にしていけるような話題を時よりお送りしていきたいと思います~! 良かったら信州民に知ってほしい県外の地方の魅力も伝えていきたいなぁ~

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