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【気になるあの人のはたらき方#2】カレー屋ヒゲめがね・豊田陽介さん

  • 2023.06.08
  • 2023.06.12
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皆さんこんにちは!シンダイガイド外部ライターのねね(大岩音寧)です。

突然ですが、「自分らしい」はたらき方をしたいと思ったことはありますか?現在それが見つかっていても、見つかっていなくても、自分らしく働けるのが理想だという方がきっと多いのではないでしょうか?

さて、2023年2月に、学生が生き方・働き方を見つめ直すイベント「いきはたパーク」を開催しました。今回はその運営メンバーである私が、いきはたパークに賛同してくださったカレー屋「ヒゲめがね」の豊田陽介さんにインタビューを行い、どのような「自分らしい」働き方をしているのかを発見してきました!

カレー屋ヒゲめがねの豊田陽介さん

▼「いきはたパーク」の概要はこちらをチェック!

カレー屋ヒゲめがねとは?

店舗外の看板

カレー屋ヒゲめがねとは、長野県佐久穂町にIターンして夫婦二人で切り盛りする週3日営業のカレー料理店&「誰かに笑顔や元気を届けたい屋」です。

ん?と私も最初は疑問に思いました。単なるカレー屋ではないことは、事前に調べていた時になんとなく予想はしていましたが、まずこれについて伺いました。

カレー屋じゃなくて、誰かに笑顔や元気を届けたい屋ってつまり…?

元々カレーは好きでしたが、カレー屋がどうしてもやりたい!といった想いで起業したわけではないんですよね。

「自然豊かな環境で、自分のワクワクをぶらさずに、家族とゆったり暮らしたい」という自身の『ありたい姿』を実現するには企業勤めでは難しい。企業勤めで実現できないとなると起業するしかない。では起業するとしたら何ができるか。そう考えた時に、「カレーを作ること」ぐらいしか思い浮かばなかったんです。そんな理由でカレー屋を起業しました。

左:ねね 右:豊田さん

豊田さんの前職はハウス食品。入社前からカレーが好きで、会社では難易度の高いスパイスマスターの資格も取ったほど。しかし現在は、週3日のみの営業で、週4日は自分や家族と過ごす時間に当てています。

いったいどんな経緯を辿って「自分ファースト」の思想にたどり着き、個人経営の店を切り盛りしているのか?そして、そんな豊田さんの人柄はどこから来ているのか?その経緯を辿ります!

キャリアの経緯

海外にカレーを広めたいとの想いからハウス食品に入社し、営業・営業企画・新規事業開発・ダイバーシティ推進など様々な業務を担当していました。

ハウス食品時代

誰よりも仕事熱心だった当時の口癖は「仕事の報酬は仕事」でした。頑張れば頑張っただけ成長し、成果も出て、周りからも認められる。認められれば、更に面白い仕事を任せて貰える。充実した日々を過ごしていたなと思う一方で、「会社のために全力を尽くす」ことを隠れ蓑にして、「自分は何がしたいのか」という働く上での「本質的な問い」から逃げていたのかもしれません。

そんな自分が変わる大きなきっかけとなったのが、三人目の子どもが生まれた時に、思い切って取得した一年間の育休でした。

また長い休みが取れるこのタイミングで、妻の友人がいる長野県佐久穂町に一か月間短期移住しました。そこでは、開校予定の大日向小学校の体験スクールが開かれており、子供達が楽しそうに参加している姿をみて、ここに通わせたいと思いました。なにより、「個性」を認め惹き出してくれる環境でした。

たまたま行った町で魅力のある学校に出会った。これって「ご縁サーファー」なんです。

ご縁サーファー…?

生きていれば「ご縁」という波が次々と現れると思うのですが、そういった波に思い切って乗っかり続けたからこそ、佐久穂町や大日向小学校にも出会えたんです。よく分からない波に乗るのは、どこに辿り着くか分からない不安もあるかもしれません。が、よく分からない世界に連れてってくれるからこそ、経験したことのない面白いことに出会える。面白そうな波が来たなら、迷わずのっかってみる「ご縁サーファー」を意識してみることで、世界が拡がっていくのかもしれません。

…しかし育休復帰後、思わぬ落とし穴が待っていました。

今まで会社では、誰かの期待に応えることを起点に、成長し、成果を出し、感謝され、自分の価値を感じてきました。しかしこれがやる気の源にならなかったんです。自分をダメだと思うようになると、あらゆる場面でできない自分に目が行くようになり、自信を失い、成果も出ない。仕事で成果を出せない自分には価値がないと思い込み、さらに自己嫌悪に陥るという「負のスパイラル」にはまっていきました。

いつまでもこのままではいられない。そんな豊田さんが行きついた先は、自然あふれる佐久穂町で自分ファーストの暮らしを送りながら起業をすることで、自分が幸せになることでした。

自分が幸せになることで、他人にも幸せを分けることができる。これをシャンパンタワーの法則と呼んでいます。

シャンパン…ですか?

そう、シャンパンタワーって、上のグラスが満たされることでその下にあるグラスも満たされていきますよね。一番上が自分、その下が他の誰かだとすると、自分が満たされると他人も満たそうと思うようになるんです。

自分が満たされている中、他人をどのように満たしたいですか?

自分が受け取った恩は誰かに受け渡す「恩贈り」をしたいです。受け取った恩をそのまま返すのではなく、自分だからこそできることに目を向け、他の誰かにその恩をつなげていく。その温かい気持ちを受け取った誰かが、またその方だからこそできることに目を向け、他の誰かにつなげていく。

そんな「恩贈り」のループが回りはじめたら、世の中が今よりも少しだけ明るく、楽しいものになるのではないかと思っています。

自分の大切な価値観を大切にして欲しかったので、それぞれの価値観に気づきを得られるような場所を増やしたいと思いました。また価値観の異なる人を否定し合わない、それぞれがいいねと言い合える世界になって欲しいと願いました。

なるほど…とても深いですね…

深海に深く沈むぐらい、どっぷり豊田さん思想にハマってしまいました(笑)

現在は自分らしい生き方を送っている豊田さん。カレー屋として、美味しいと言われることはもちろん嬉しいのですが、お客様のために美味しいものを提供しているという考えではありません。あくまで、自分の幸せの次に、お客様の幸せという順番を間違えないことが大切だといいます。

また様々な体験イベントも開いています。その思想は「恩贈り」。自分だからできる恩贈りとして「100人カレー」というカレー教室や、「死の体験旅行」というワークショップを開きました。これも全部、過去に自ら経験してきた恩を、誰かに贈ることで、その誰かが他の誰かに贈る。そんなループを願って、開催しています。

本当に、カレー屋というよりも、「誰かに笑顔を届けたい屋」なんですね!納得!

▼豊田さんのキャリアを詳しく知りたい方はこちらもチェック!
https://note.com/higemeganecurry/n/n0ef568cc7889
https://lifeshiftjapan.jp/interview/6833/

経験から学んだこと

過去があって今の豊田さんがあると考えた私は、こんな質問をしました。

今の自由な生活はやはり、過去のつらい経験があってこその自由なのでしょうか?

前職時代の仕事は、大変は大変でしたけど「辛い」という感覚は無かったですね。その頑張った前職の経験が今に活かされていますしそういったハードワークは、人生の早い段階で必要な経験なんだと思います。
筋トレって、いきなりやってもすぐに結果が出ないじゃないですか。私は前職で相当ハードな筋トレをしてきたので、今ゆとりを持って走れているんです。いきなり自由を求めても、その自由を獲得するだけの筋肉が無ければ、自由を謳歌することは難しいんじゃないかと思います。
だからこそ、自分の知らない世界に触れ、遠くの場所で生き、揉まれることも大事だと思います。色んな世界で視野を広げるためには、筋トレの時代も経験した方が良いと思います。

筋トレか…。頑張らなきゃ(笑)

「頑張る」ではなく「楽しむ」という言葉を使った方が良いですよ!
その方が、自分で発言して自己暗示がかかるし、「やらなきゃ」という責任ではなくそれも含めて楽しむことができると、「楽しさ」が伝播して柔らかい世の中を作れると思います。

「楽しむ」か!

確かに、その方が物事をポジティブに捉えることができますよね。私自身も人生を楽しくいきたいので、「頑張る」ではなく「楽しむ」と発言することを心掛けていきたいです!

将来を考える若者へ

豊田さん自身が若い時代につらい経験をしたように、今の若者もつらい経験を乗り越える時が来る。今の若者は色んな漠然とした不安を抱えるなか、彼らに伝えたいメッセージをお聞きしました。

やりたいことが見つからないという方へ

やりたいことが見つからなくても、自分のできること、会社から求められることから見つめ直すことで、いすれかやりたいことが見つかって行くと思います。

「Will(やりたいこと)・Can(できること)・Need(求められること)」

この3つの輪が重なるところが天職だと言われています。そのうちのCan・Needの輪を広くしていくと、Willが重なりやすくなるわけです。自分にWillがないことを許容してCan・Needを見つけていくと、きっと天職にたどり着けますよ。

会社選びに迷っている方、仲間に不安を抱いている方へ

就活って最初は宝くじなんですよ。

会社にはそれぞれに良し悪しがあるので、選択肢を並べて、最終的には選ぶ。でもその会社が自分に合っているかは、入ってみないと分からないんです。価値観が合わない人だっています。

そして価値観が違うなかで皆が認め合える世の中にしていくためには、ちゃんと耳を傾け合えるか・話を「聴けるか」が大事です。

価値観が違ってもマウンティングはしないで、そうなんだと受け止める。その想いの裏に、聴いてる側の世界が広がるし、話している側の世界も広がって行く。そのためには「聴き上手の達人」になると良いですね。

マウンティングしてきても、あくまでも他人は他人、自分は自分なので、柳のように上手にかわすことがカギですね(笑)。

そもそも「人間」って…

人間ってなんでひとのあいだと書くのでしょうか?「あいだ」とはなんでしょうか?

「あいだ」とは、人同士の空気なんです。そしてこれをどのように埋めていくかがカギです。

人は他人との間で生きている、つまり人の目を気にして生きています。しっかりとしたコミュニケーションはできていても、自分の素が苦しいと思っているかもしれません。「あいだ」を認め合えることが当たり前であり大事なので、これを否定することが価値観の否定につながるわけです。この空気をどう満たすか、難しいけど正解がないのが良いんですよね。

若者ともっと交流したいという豊田さん。いきはたパークへの賛同の理由も、これまでの経験や若者への想いにありました。いきはたパークも、多様な感性が集ったイベントだったこともあり、豊田さん自身が目指していた世界と共通部分が多くあったそう。

お客様に美味しいと言ってもらえるのも嬉しいけど、自分のために週4の余白で謳歌する生き方を送っています。

色んな生き方・はたらき方を知り、選択肢を広げられるほど豊かな人生を送れる。そんな想いがいきはたパークの掲げる想いと合致していました。私も、いきはたパークのように実際に若い方と話して、多世代を超えた感性に触れたいですね。

生き方に正解はないけど、自分のしたいこと、気持ちに素直になって生きること。それが豊田さんの生き方であり、はたらき方なのです。

最後に

今回のインタビューは、カレー屋の経営のお話ではなく、「豊田さん」という1人の人生について貴重なお話を伺うことが出来ました。

豊田さんは、自らの経験から自分を大切にしつつ、他の人も幸せにできる方法を考え、自分のはたらき方を貫いています。

はたらき方に正解はないけど、心地よいはたらき方は一人ひとりにあるはずだというメッセージ性が込められていました。また、たとえ仕事選びで失敗してもそれが必ずしも損ではなく得である、つまり自分自身が失敗したことが今に繋がっていくということも、豊田さんのキャリアから受け取ることができます。失敗を得だと思うことが、自分らしさに気づくきっかけになるのですね。

余談ですが、最後にいただいたカレーがとても美味しかったです!ぜひ、佐久穂町に足を運んだ際にはヒゲめがねへ!

この記事を書いた人

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